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電車男の映画「めし、どこかたのむ」

1 :ほんわか名無しさん:04/10/29 23:03:15
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43 :エルメス ◆A4jsQTgi.Q :04/10/31 07:23:03
【ひとり】
帰りの電車の中、友花里は何度目かのため息をついた。

せっかく街に出てきたというのに、結局、ひとり寂しく
ランチを食べただけ。店の雰囲気は悪くなかったのだけれど、
味のほうは少し期待はずれで、思いのほかがっかりしてしまった。
店を出て、なんとなく晴れない気持ちのまま歩いていたら、
なんだかどんどん悲しくなってきて、最後は泣き出してしまいたいほどで。

だから今、こんな明るい時間に帰りの電車に乗っている。
予定していた買い物はぜんぶあきらめた。


44 :エルメス ◆A4jsQTgi.Q :04/10/31 07:24:31
ほんとうは、久美子が一緒のはずだったのだけれど、ふた月ほど前に彼氏
ができてからというもの、付き合いが悪い。今日の約束だって、もう二回も
延期されていたのだ。
いくら相手の休みが不規則で、前もって計画を立てにくいからって、十年来
の親友をないがしろにしすぎじゃないのか。いざとなったら親友と彼氏と、
いったいどっちをとるつもりだあいつは。

(そりゃ、ふつうは彼氏だろう)

そして、またため息。

45 :エルメス ◆A4jsQTgi.Q :04/10/31 07:25:37
気が晴れない理由は、友花里にも分かっている。ひとりだからだ。

ひとりだからつまらない。 ひとりだから寂しい。ひとりだから悲しい。
今日食べたランチだって、久美子とだったら美味しかったはずだ。美味しく
なくても、一緒に文句を言える相手がいれば楽しかったと思う。
日曜の昼日中に女がひとりで食べて美味しいランチなんであるわけない。
そういうこと。

46 :エルメス ◆A4jsQTgi.Q :04/10/31 07:27:24



友花里にも彼氏がいた時期はあった。五年近くも前になる。友花里は
短大生で、彼は同い年の四大生だった。サークルの関係で知り合って、
告白されて、断る理由もなかったので付き合い始めて、それなりに深い
関係になり、友花里がひと足先に就職して間もなく別れた。
自然で、あっけなかった。後悔はないし、悪い思い出でもない。
今ここで再会しても、気まずさを感じずに話ができるだろう。

47 :エルメス ◆A4jsQTgi.Q :04/10/31 07:28:05

それは、言い換えれば、彼は自分にとってその程度の存在でしかなかった
ということだ。どこか真剣じゃなかった。彼をちゃんと見ていなかった。
そんな自分の不真面目な態度が彼を遠ざけてしまったのだ。別れてからそう
気づいて、彼に申し訳ない気持ちになり、少しだけ泣いた。

以来、友花里は彼氏を作ろうと思ったことはない。好意を寄せてくれる人もいた
けれど、気づかないふりをした。食事に誘われても、すべて断ってしまった。
意識しすぎなのは分かっていたけれど、つい構えてしまう。

48 :エルメス ◆A4jsQTgi.Q :04/10/31 07:28:54

もちろん、惜しい気がしないわけでもない。
ドラマのような出会いにあこがれる気持ちがないわけでもない。それでも、
やっぱり自分は恋愛には向いていないのだと思う。

このところ、こうして不毛に悩む時間が多いのは、歳のせいもあるだろう。
四捨五入したらハタチだと言い張っていられるのも、今年が最後だ。
両親もそれとなく気にしている様子だし、意識しないのは無理というものだ。

そしてまた、友花里はため息をつく。


49 :エルメス ◆A4jsQTgi.Q :04/10/31 07:34:16

【酔っ払い】

不意に、車内が騒がしくなった。
見れば、ひとりの女性がやけに威勢のいい老人に絡まれている。こんな時間から、
だいぶ酔っているみたいだ。ろれつが回っていなくて聞き取りづらいけれど、
とにかく声が大きい。すごく迷惑だ。今日という日はつくづくついていない。

やがて電車はホームに入り、ドアが開く。

すると、それまで絡まれて迷惑そうにしていただけだった女性が、突然老人を一喝した。
車内に響く叱咤の声。女性はそのまますばやく電車を降りてしまい、車内の視線は
老人に集中する。

50 :エルメス ◆A4jsQTgi.Q :04/10/31 07:35:07

一瞬、友花里は老人が女性を追いかけて行くんじゃないかと心配したけれど、当の本人
はよほど意表を突かれたらしく、呆けた顔で、小走りに去る女性をただ見送るだけだった。
やがてドアが閉まり、電車が再び動き出す。

我に返った老人は、ばつが悪そうに、ぐるりと車内をにらみつけた。
みんな、慌てて目をそらす。

「なんだあ、文句があるか、おお」

心臓が跳ね上がった。老人が友花里の座っている席のほうにふらふらと歩いてくる。

(最悪だ。あんまりだ。こっちに来るなよう)

51 :エルメス ◆A4jsQTgi.Q :04/10/31 07:36:20

老人は友花里のすぐ手前で立ち止まった。隣に座っている、中年の女性三人組の前。
つり革にだらしなくつかまって、ぶはあ、と大きく息を吐く。お酒臭い。気持ち悪い。
早く帰りたい。友花里が降りる駅はまだだいぶ先だ。
とにかく、次の駅に着いたら車両を変えなくては。

老人は、今度は三人組にしつこく絡み始めた。相変わらず言っていることがよく聞き取
れないけれど、すごく苛々していることは分かる。おばさんたちはうつむいたまま小さく
なってしまっている。老人はひとりでどんどん興奮していく。怖い。

「だあから、女は黙って男の言うこと聞いてりゃいいんだよ」

ひっ、と三人組のひとりが声を上げた。
突然老人がその人の顔に手を伸ばして、顎を引き上げたのだ。大変だ。
このお爺さん危ない。なんとかしないと。誰か呼んでこなくちゃ。そう思いながらも、
友花里は動くことができなかった

52 :エルメス ◆A4jsQTgi.Q :04/10/31 07:38:19

その時。

「おい、いい加減にしろよ」

友花里の隣、三人組とは反対側に座っていた青年が、老人を制した。
聞こえなかったのか、それとも無視する気なのか、老人の反応がない。
青年は身を乗り出して、さらに強い調子で繰り返した。

「やめろって言ったんだよ」

顎をつかまれた女性は、いいから、大丈夫だから、そう合図するものの、
どう見ても大丈夫と言える状況であるはずがない。これで青年が、分かりました、
と引き下がったら、そっちのほうがどうかしている。

「なんだお前は」

53 :エルメス ◆A4jsQTgi.Q :04/10/31 07:39:37

老人は女性から手を離すと、彼に顔を向け、電車の揺れにふらつくように踏み出した。
ふらふらと友花里の目の前を通り過ぎ、老人は青年の前に立ち止まる。
ひとまず女性は助かったけれど、友花里自身にしてみれば、状況はあまり改善していない。
老人との距離は先ほどよりも近い。ほとんど目の前も同然だった。

(サイアクだ……)

勇敢な青年
「さっきからじろじろ見やがって」
「なんですか。警察を呼びますよ」

54 :エルメス ◆A4jsQTgi.Q :04/10/31 07:42:24
勝手に呼べ、とでも言いたかったのだろう。老人がほとんど言葉になっていない大声を上げる。
そのとき、友花里のこめかみの辺りに、何かが当たった。
老人が振り上げた手が、すぐ傍にいた友花里をかすめたらしい。

「きゃっ」

大した痛みではなかったものの、驚いて、反射的に声を上げてしまう。
悲鳴に弾かれたように青年が立ち上がり、老人の腕を掴みにかかった。三人組のひとりが隣の
車両に向かったのが目の端に映る。
人を呼びに行ったのだろうけど、友花里にはそちらを見る余裕もない。

55 :エルメス ◆A4jsQTgi.Q :04/10/31 07:43:12

老人と彼はしばらく互いに掴み合ったまま、動かずにいた。
緊張のあまり、友花里の息が詰まりそうになった頃。
たぶん一分と経っていなかったのだろうけれど、隣の車両からスーツ姿の男性が駆け寄ってきて、
なだめるように声をかけながら、二人を引き剥がした。

スーツの男性は、青年にも座るように促すと、面白くなさそうに黙り込んだ老人をドアの近くに
引きずって行った。やがて車掌もやってきて、男性が老人を引き渡して隣の車両に戻るのを見て、
友花里はようやく解放された気分になった。

56 :エルメス ◆A4jsQTgi.Q :04/10/31 07:44:14
友花里の隣に座りなおした青年は呼吸を整えている。
彼が老人に掴みかかったのは自分の悲鳴が原因のように友花里には思えて、そうでなくとも、
彼が老人を追い払うために行動してくれたことは事実で、なによりこれだけのことがありながら、
隣で黙って座っているのも気まずい話で、とにかく、この場合、せめて何かひと言、自分が声を
かけるべきなのだろう。

「迷惑な人でしたね」

わずかに迷った末、とっさに口をついて出た言葉がそれだった。
言ってしまってから、後悔する。そのまんまじゃないか。

「本当、迷惑です」

57 :エルメス ◆A4jsQTgi.Q :04/10/31 07:46:10

下を向いたままの彼の、不機嫌そうな声にどきりとする。
もちろん、状況的に、青年が友花里に対して腹を立てているのではないことは明らかだ。
それでも、仮にも恩人に対して、自分ももう少し気の利いたことは言えないものかと、
友花里は頭を抱えたい気持ちになった。

ふと、シートを通じて青年の足が微かに震えていることに友花里は気付く。
改めて青年を見ると、どこか頼りなく、およそ喧嘩とは縁がなさそうな印象を受ける。
歳は二十代前半といったところ。友花里よりも少し年下だろう。
酔ってふらふらだった老人のほうがずっと迫力があった。

(けっこう無理したのかな)

58 :ほんわか名無しさん:04/10/31 07:50:18
この電車男の話って本当にあった話?
それとも妄想によるネタ?

ttp://www.geocities.co.jp/Milkyway-Aquarius/7075/trainman.html

これ読んで泣いちゃったけど、ネタなら損した感じ。
でも読んでるとネタに見えないけどすぐに本になるのはおかしい。
一体どっち??

59 :エルメス ◆A4jsQTgi.Q :04/10/31 07:52:45

そう言えば、老人を制した声も、少しうわずっていたような気がする。
だとしたら、なおのこと、偉いのではないか。
自分は、すぐ隣でおばさんたちが絡まれているのに何もできなかった。
いくら男の人だからって、怖いのに、自分と何の関係もない人のために行動を
起こすなんて、なかなかできることじゃない。これはちょっとした感動だ。

不意に青年が顔を上げたので、友花里は慌てて視線をはずす。無神経に眺めていた
ことを咎められるかと思ったけれど、そうではなかった。車掌がこちらに来たのだった。

「あのお爺さんは警察に引き渡しますので、次の駅で一緒に降りてください」

60 :エルメス ◆A4jsQTgi.Q :04/10/31 07:54:49

駅に着いて、車掌、老人、三人組、そして友花里と青年が一緒に降りた。
車掌が呼んできた警官が、全員に、名前や住所、先ほどの電車内での様子など、
簡単な質問をする。

ひととおり質問が済むと、警官が聞いた。

「事件にしますか」

三人組は、即座に否定した。友花里としても、こんなことにあまり深入りしたくなかったし、
いちばん迷惑を被ったのは三人なのだから、彼女たちが事件にしないと言えば、
友花里がこだわる理由はなかった。青年は、自分は何もされていないから、と短く答えていた。

61 :ほんわか名無しさん:04/10/31 07:54:58
エルメスってガンダム思い出すなw


言いたいのはそれだけだ

62 :エルメス ◆A4jsQTgi.Q :04/10/31 07:56:06
事件にはしなくても調書は取らないといけないらしく、近くの交番に場所を移すことになった。
酔っ払いの老人は、友花里たちが警官の質問に答えている間に、ひと足先に、別の警官に
連れて行かれている。

交番まで歩く間、青年は友花里たちに何度も謝っていた。
曰く、自分のせいで大事に巻き込んでしまった、とのことだが、とんでもない。
悪いのは酔っ払いの老人であって、青年は、言わばあの場にいたみんなにとっての恩人だ。
友花里たちはみなそう言ってねぎらうのだけれど、それでも青年は終始恐縮していた。


63 :エルメス ◆A4jsQTgi.Q :04/10/31 07:57:24

交番に着いて、それぞれが調書を取られている間も、青年は謝ってばかりだった。
謙遜している様子ではなく、本当に申し訳なさそうで、なんだか気の毒なくらいだ。
今は、酔っ払いに立ち向かった時の勇敢さは少しも見えない。どちらかと言えば気弱そうな、
でも誠実な別の表情がそこにはあった。
三人組のひとりに、いまどきお兄さんみたいな人はいない、と誉められると、少し照れたように
引きつった頬が印象に残った。

64 :エルメス ◆A4jsQTgi.Q :04/10/31 07:58:09
たぶん、友花里たちに時間をとらせた責任を感じていることと、逆に誉められて、照れや戸惑い
もあったのだろう。
どうにも居心地が悪くなったらしく、調書を確認していた警官に挨拶し、友花里たちにもう一度
丁寧に謝ると、青年はそそくさと帰ろうとした。

なぜか、友花里は慌てた。自分でも理由は分からなかったけれど、このまま青年と別れてしまう
ことに微かに不安を覚えたのだ。自分は本当に感謝しているのに、きちんと伝わっていないような
感覚。そして、それだけではない、形にならない小さな感情。

65 :ほんわか名無しさん:04/10/31 07:58:38
おはよう。

朝からがんばってますね。

66 :エルメス ◆A4jsQTgi.Q :04/10/31 07:59:07

しかし、青年を引き止める口実があるわけもなく、そもそも理由がない。
友花里にできたことは、もう一度、心から礼を言うだけだった。
三人組も姿勢を正して、友花里にならう。

「よろしかったら、お名前とご住所を教えていただけませんか」

はっとして、友花里が顔を上げると、三人組のひとりが手帳を差し出していた。
青年は困惑した表情を浮かべながらも、その手帳を受け取り、言われたとおりに書き始めた。
口実も、理由もあったのだ。

(そうだ。お世話になった人の名前も知らないなんて、逆に失礼じゃないか)

67 :エルメス ◆A4jsQTgi.Q :04/10/31 08:00:15
急いでバッグを探り、手帳を取り出す。

「私も、お願いします」

こうして友花里は青年の名前を知ることができた。もう一度だけ、機会を得たのだ。

「ぜひ、お礼をさせてくださいね」

これが、滝沢昇と高村友花里の出会いだった。


68 :エルメス ◆A4jsQTgi.Q :04/10/31 08:06:38
3月17日(水)

【着信履歴】

朝起きると、携帯に着信履歴が残っていた。友花里には見覚えのない番号だ。
着信があったのは夕べの二十三時。その時間はまだ起きていたはずだけど、無音にしていた
から気づかなかったらしい。留守電にはメッセージは残されていない。

(ワンギリか、間違い電話かな)

そう考え、履歴を消そうとして、ある可能性に気づいて思いとどまった。

(滝沢さんかもしれない)

69 :エルメス ◆A4jsQTgi.Q :04/10/31 08:09:41

彼が昨日というタイミングで電話をくれることは、意外ではあるけれど、
ありえない話ではなかった。
友花里は、電車での一件があった翌日、つまりおとといの月曜日に、
さっそく滝沢へのお礼の品として、ティーカップを送ったのだ。
それが昨日届いて、そのことでわざわざ電話をくれたのかもしれない。

カップはエルメスで、仕事の関係で安く手に入れることができた。形式だけと
片付けられない程度には、良いものを選んだつもりだ。お礼の手紙も添えた。
友花里の感謝の気持ちに偽りのないことを、どうしても伝えたかったから。

70 :エルメス ◆A4jsQTgi.Q :04/10/31 08:10:25

そうしなければ、友花里たちを警察沙汰に巻き込んでしまったことが、ずっと彼の
負担になっているような気がして落ち着かなかったのだ。もちろん、友花里たちは、
滝沢に責任があるなどとは思っていない。
友花里としては、感謝の気持ちをきちんと伝えて、少しでも安心してもらいたかった。

着信が滝沢からのものだとすれば、カップを喜んでもらえたのならもちろん嬉しいし、
手紙に書きそびれたこともいくつかあったので、直接話せるのなら、いい機会だとも思う。

でも?

(ほんとうに、滝沢さんからだろうか)

71 :エルメス ◆A4jsQTgi.Q :04/10/31 08:12:41
冷静になってみると、実際のところ、あまり自信はない。
友花里が受けた印象では、滝沢という青年は、真面目ではあっても、こういうことに
細やかなタイプではなさそうだ。そして、滝沢の人物はともかく、友花里が知る限り、
こういったやりとりに関して、男性は総じてうとい。加えて、若いとなればなおのことだ。
やはり、着信が滝沢のものである可能性は低いだろう。

72 :エルメス ◆A4jsQTgi.Q :04/10/31 08:13:28
一方で、滝沢からである可能性も、友花里は捨てきれないでいる。
滝沢の住所を見た限りでは、まず間違いなく実家だろう。母親あたりが気がつく人であれば、
息子に電話をかけさせても不自然ではない。もっとも、その場合は、かかってきた時間が
問題になるのだけれど。

いくら悩んだところでらちがあかない。

(こちらからかけてみれば、分かることだ)

友花里は頭を切り替えて、朝の支度を始めた。

73 :エルメス ◆A4jsQTgi.Q :04/10/31 08:16:06

昼から何度かかけてみたものの、結局、電話がつながることはなかった。

一度だけ、先方からの着信があったけれど、その時は運悪く友花里の手が
塞がっていて、気づくのが遅れてしまった。仕事から帰ってから、もう一度かけて、
この日はあきらめることにした。以降は、ほとんど他人の間柄では、電話をかける
にはためらわれる時間帯だ。先方からかけてくるのを待つしかない。
それがだめなら、また明日かけてみればいい。

(でも、もし、滝沢さんじゃなかったら)

74 :エルメス ◆A4jsQTgi.Q :04/10/31 08:17:02
すっかりカップの感想を聞くつもりでいた友花里は、そう考えたら、なんだか憂鬱に
なってしまった。あの時の話題もいくつか用意していたのに。

電話を気にしながら、落ち着かない時間を過ごす。

(また、遅くにかかってくるかもしれない)

そう気づいて時計を見ると、間もなく二十二時になろうとしていた。
昨日と同じ時間にかかってくるとしたら、先に風呂に入っておいたほうが良さそうだ。
もし電話が違ったら、もう一度手紙を書いてみようか、などと考えながら、友花里は支度をする。

75 :エルメス ◆A4jsQTgi.Q :04/10/31 08:17:54

母親に声をかけて、部屋に着替えを取りに戻ったとき、電話が鳴った。
慌ててとりあげて、通話ボタンを押す。

「すみません。滝沢ですけど、高村さんですか」
「あ、やっとつながった」

つい、思ったことをそのまま口に出してしまう。

76 :エルメス ◆A4jsQTgi.Q :04/10/31 08:20:39
案の定、滝沢は、昼間電話に出られなかったこと、遅い時間の電話になってしまったことを、
まず謝った。それから、カップが無事に届いたことを教えてくれた。
礼を言う様子が本当に嬉しそうで、友花里も安心すると同時に、つられて嬉しくなった。
送った甲斐があったというものだ。

それから、あの時の話をした。滝沢がまた謝ろうとするので、滝沢が帰った後でも、
みんなで褒めていたこと、感謝していたことを友花里は伝えた。自分でも驚くほど、話したいことがあった。

77 :エルメス ◆A4jsQTgi.Q :04/10/31 08:22:12

しばらくして、風呂に入らないのか、と階下から母親の声が響いた。
気がつくと、時間は二十二時半になろうとしている。それどころではないので、後で、と答えるが、
滝沢にも聞こえてしまったらしい。先に入るように勧められてしまった。

今度はこちらからかけることを約束して、一旦電話を切る。そのまま大急ぎで風呂に飛び込み、
素早く頭と身体を洗って部屋に駆け戻った。所要時間、わずか二十分。自己最短記録だ。

「なあに、ずいぶん早風呂だこと」

部屋に戻る友花里に、母親が呆れたように言った。

78 :エルメス ◆A4jsQTgi.Q :04/10/31 08:26:53

ところで
滝沢は、二回もコールしないうちに電話に出た。
思ったとおり、携帯を持ったまま待っていてくれたに違いない。

「急がせてしまったみたいで、すみません」

また謝られてしまった。

「わたし、いつもお風呂はこれくらいですよ」
「そうですか。いや、でも、すみません」

もちろん嘘だ。たいてい一時間は浸かっている。でも、正直に言ったらまた
謝らせてしまうだろうし。最初から信じてもらえていないみたいだけど。

79 :エルメス ◆A4jsQTgi.Q :04/10/31 08:28:09

話題を変えて、友花里が、両親や友人に滝沢のことを話したと伝えると、電話の向こう
でしどろもどろになってしまったのがおかしかった。そして、滝沢らしいとも思った。
第一印象からほとんど変わっていない。純朴な青年だ。

電車でのこと。交番でのこと。滝沢が帰った後のこと。

そろそろ話題も尽きようとしていた。滝沢の口数が心なしか少なくなっていることに気づいて、
つい長話につき合わせてしまったことを、友花里は反省した。
滝沢としては、カップのお礼だけを言うつもりだったろうに。

80 :ほんわか名無しさん:04/10/31 08:30:11
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